この記事の概要
AWS Interconnectが2026年4月にGAとなり、同年5月にはOracle Cloud Infrastructure(OCI)対応のプレビューが開始されました。
これによりAWS↔GCPのプライベート接続が実用段階に入り、AWS↔Azure、AWS↔OCIも順次対応予定です。
インフラエンジニアにとって「マルチクラウド間のプライベート接続」が劇的に簡単になるこの変化を、実務目線で解説します。
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AWSとGCPを専用線でつなぐ時代が来た
「マルチクラウドで運用したいけど、クラウド間の通信をどうするか……」というのは、インフラエンジニアなら誰もが一度は悩む問題です。
これまでは VPN トンネルを自前で管理するか、コロケーション施設を借りるか、サードパーティのネットワーク基盤を使うかしかありませんでした。
設定に数週間、場合によっては数ヶ月かかることも珍しくありませんでした。
それが AWS Interconnect の登場で大きく変わります。
2026年4月、AWSはAWS Interconnectを正式リリース(GA)しました。
AWSのVPCと他クラウドのVPCを、パブリックインターネットを経由せずマネージドなLayer 3プライベート接続でつなぐことができるサービスです。
さらに2026年5月には、Oracle Cloud Infrastructure(OCI)との接続プレビューも開始されました。
Google CloudはすでにGA、Microsoft Azureも2026年後半に対応予定です。
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なぜ今まで難しかったのか——従来のマルチクラウド接続の限界
VPNトンネルの問題点
これまでAWSとGCPを接続する最も一般的な方法はIPsec VPNでした。
しかし実務で使うと以下の課題に直面します。
- 帯域の不安定さ: VPNはインターネット経由のため、経路の混雑に影響される
- レイテンシの予測不能: ピーク時に遅延が増える
- 設定の複雑さ: 両クラウドのVPN Gateway、BGP、ルーティングを手動で管理する必要がある
- 運用負荷: 障害時の原因特定が困難
graph LR
A[AWS VPC] -- IPsec VPN --> I[インターネット]
I -- IPsec VPN --> G[GCP VPC]
style I fill:#ff9999,stroke:#ff0000
コロケーション接続の問題点
Direct ConnectやCloud Interconnectを使いコロケーション施設経由で接続する方法もありますが、こちらは
- 物理的なクロスコネクトの手配が必要(数週間〜数ヶ月)
- コロケーション施設の契約が必要
- 障害対応が複雑(物理ポートの問題か、設定の問題か)
といったハードルがありました。
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AWS Interconnectが解決すること——3ステップでプライベート接続が完成
AWS InterconnectはAWSとGoogleが共同で策定したオープン仕様をベースにしており、物理コンポーネントの管理が不要です。
接続の仕組み
AWS Direct Connectコンソールから以下の3ステップで完了します。
1. 接続先クラウドプロバイダーを選択(Google Cloud、Azure、OCI)
2. ソースリージョンと宛先リージョンを選択
3. 帯域幅を指定(500 Mbps〜)
AWSがアクティベーションキーを生成し、GCP側はそのキーで接続を完了させます。
ルートは双方向に自動で伝播するため、BGPの手動設定も不要です。
# AWS CLIでの接続作成例(概念的なイメージ)
aws interconnect create-connection \
--provider GOOGLE_CLOUD \
--source-region us-east-1 \
--destination-region us-east4 \ # Google Cloud N. Virginia
--bandwidth 1GBPS
トラフィックは専用バックボーンを通る
接続後のトラフィックはAWSのグローバルバックボーンとパートナークラウドのプライベートネットワークを通り、パブリックインターネットを一切経由しません。
これにより
- 予測可能なレイテンシ: インターネット混雑の影響を受けない
- 一貫したスループット: 帯域が保証される
- セキュリティ: 通信が公開されない
が実現します。
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実務での活用シナリオ
シナリオ1: データ分析基盤のマルチクラウド化
AWS上のRDSやS3に蓄積されたデータを、GCPのBigQueryでリアルタイム分析したいケースです。
従来は一旦データをエクスポート→GCSにアップロード→BigQueryでロードという手順が必要でしたが、AWS Interconnectを使えば直接プライベート接続でデータ転送が可能になります。
graph LR
A[AWS S3 / RDS] -- AWS Interconnect\nプライベート接続 --> B[GCP BigQuery]
style A fill:#ff9900
style B fill:#4285f4
エグレスコストの削減も見逃せません。
クラウド間のデータ転送は通常、送信側のエグレス料金が発生しますが、プライベート接続を使うことで費用を抑えられるケースがあります(詳細は各クラウドの料金ページを確認してください)。
シナリオ2: 段階的なクラウド移行
AWSからGCP(または逆方向)へのシステム移行を段階的に行う場合、移行期間中はハイブリッド状態が続きます。
この期間中、プライベート接続があれば:
- マイクロサービス間の通信をパブリックインターネット経由にしなくて済む
- 移行中のシステムも本番同様のパフォーマンスで動作する
- セキュリティ要件を維持したまま移行できる
シナリオ3: 災害対策(DR)構成
プライマリをAWSに置き、DRサイトをGCPやOCIに構築する構成です。
graph TB
subgraph AWS [AWS - プライマリ]
EC2[EC2 / EKS]
RDS[RDS]
S3[S3]
end
subgraph GCP [GCP - DRサイト]
GKE[GKE]
CloudSQL[Cloud SQL]
GCS[GCS]
end
AWS -- AWS Interconnect\nリアルタイムレプリケーション --> GCP
AWS Interconnectのプライベート接続があれば、レプリケーションの遅延を最小化でき、RPO(目標復旧時点)を大幅に改善できます。
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対応リージョンと料金
2026年5月時点のGAリージョンペア(AWS↔Google Cloud)
| AWSリージョン | GCPリージョン |
|---|---|
| us-east-1(N. Virginia) | N. Virginia |
| us-west-1(N. California) | Los Angeles |
| us-west-2(Oregon) | Oregon |
| eu-west-2(London) | London |
| eu-central-1(Frankfurt) | Frankfurt |
OCI対応(プレビュー)
2026年5月時点では us-east-1(N. Virginia) と OCI US East(Ashburn)のリージョンペアからプレビュー開始。
料金
- 課金モデル: 選択した帯域幅に基づくフラットな時間料金(リージョンペアによって異なる)
- 無料枠: 2026年5月以降、各アカウントが各リージョンで500 Mbpsのローカルインターコネクトを1つ無料で利用可能
> 最新の料金は AWS Interconnect 料金ページ を確認してください。
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今すぐ移行を始めるための3つのステップ
AWS Interconnectを導入する際の実践的なアプローチを紹介します。
Step 1: 現在のクラウド間通信を棚卸しする
まず既存のマルチクラウド接続(VPN、コロケーション経由など)を洗い出し、
- 通信頻度・データ量
- レイテンシ要件
- セキュリティ要件
を整理します。
Step 2: 小さく試す
本番環境への適用前に、開発環境やステージング環境でAWS Interconnectを試してみましょう。
# AWS CLIで接続状態を確認
aws interconnect describe-connections
# 接続のメトリクスをCloudWatchで確認
aws cloudwatch get-metric-statistics \
--namespace AWS/Interconnect \
--metric-name DataTransferOut \
--period 3600 \
--statistics Sum
Step 3: 段階的に切り替える
既存のVPN接続と並行してAWS Interconnectを稼働させ、問題がないことを確認してから切り替えましょう。
フェイルオーバー設定も忘れずに。
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まとめ
AWS Interconnectは「マルチクラウド間のプライベート接続」を劇的に簡単にするサービスです。
- 従来: VPN設定に数週間、コロケーション手配に数ヶ月
- 今: AWS Direct Connectコンソールから数分で完了
インターネットを経由しないため、セキュリティ・パフォーマンス・信頼性のすべてで従来の方法より優れています。
Google Cloud GAはすでに実運用に使えるレベルですし、OCIのプレビューも始まりました。
Azureも2026年後半には対応予定です。
マルチクラウド戦略を取っている、あるいは検討しているチームは、今のうちに評価しておくことをお勧めします。
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